移動平均法による評価方法をわかりやすく解説
EMA(Exponential Moving Average)指数平滑移動平均線
【加重移動平均WMA :Weighted Moving Average】
加重移動平均は、個々の価格データへの加重を「線形的」に減少させて、平均値を計算します。
10日加重移動平均は、直近の価格データを10倍し、その前日の価格データを9倍し、10日前の価格データは、1倍し、合計を55で割ることで算出します。
特徴1
最新の価格を2倍することで重視し、N日間の価格の影響も約86%を残ります。それ以前の過去の数字の影響は、単純移動平均線では、全く無くなりますが、わずかに残っており、徐々に消滅していきます。
特徴2
単純移動平均線に比べて、振幅が小さく、反応が早いため、トレンドの分析では、転換点を早めに認識することができます。
使い方のポイント
指数平滑移動平均線では、当日の平均値は、「前日の平均値」と「当日の終値」の間にあります。
指数平滑移動平均線が上向き⇒価格は指数平滑移動平均線の上に位置している
指数平滑移動平均線が下向き⇒価格は指数平滑移動平均線の下に位置している
指数平滑移動平均線は「MACD」「ATR」に応用されています。
チャートは、赤線が「指数平滑移動平均線」、青線が「単純移動平均線」です。
「指数平滑移動平均線」の方が、相場変動に対する感応度がやや高くなっています。
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テクニカル分析辞典
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商品有高帳(移動平均法)
棚卸資産
期首繰越商品の内訳
50個×100(単価)
4/5 仕入
単価105を80個仕入れた。
①20個(前期繰越 数量)+80個(今回仕入数量)
②2,000(前期繰越金額)+8,400(今回仕入金額)
③平均単価を出します。10,400(合計金額)÷100(合計数量)
4/10 売上
50個を売り上げた。
①単価は前回の平均単価104。
②100個(前回までの合計数量)-50個(今回売上数量)
③単価は前回の平均単価104。
④50(個)×104(単価)
4/15 仕入
単価110を100個仕入れた。
①50個(前回までの合計数量)+100個(今回仕入数量)
②5,200(前回までの合計金額)+11,000(今回仕入金額)
③平均単価を出します。16,200(合計金額)÷150個(合計数量)
4/20 売上
120個売り上げた。
①単価は前回の平均単価108。
②150個-120個
③単価は前回の平均単価108。
4/30 月末
次期繰越
前回の残高分を次期繰越に転記します。
受入、払出合計一致
受入の縦数量合計と、縦払出数量合計が一致します。
また、受入の縦金額合計と、払出の縦合計が一致します。
移動平均線を使いこなす
赤い番号付きの丸が買いの場面、グレーの番号付きの丸が売りの地点です。
買い(赤い丸)
- 移動平均線を株価が上抜いたら買い
- 株価が再び移動平均線の下へ抜けるもその後切り返して移動平均線の上へ出たら買い
- 株価が下がってきて移動平均線へと接近したのち再上昇で買い
- 移動平均線から株価が大きく離れたら買い
売り(グレーの丸)
- 移動平均線から株価が大きく離れたら売り
- 移動平均線を株価が下抜いたら売り
- 株価が再び移動平均線の上へ抜けるもその後抜けきれずに移動平均線の下へ出たら売り
- 株価が上がってきて移動平均線へと接近したのち再下落で売り
グランビルの法則は、一見すると複雑に見えますが、簡単に言えば移動平均線に対して株価の位置が近づく、離れる、交差する、3つの点で買いか売りを仕掛けるというもの。主にスイングトレードなどの日をまたぐ短期取引においては必須の知識といえます。位置関係を確認して実戦で使用することで少しずつ頭の中へ入れていきましょう。
#03 ゴールデンクロスとデッドクロス
売買のタイミングを測るためのサインとして、ゴールデンクロスとデッドクロスと言うものがあります。ゴールデンクロスは、短期の移動平均線が中期の移動平均線を下から上へとクロスしたタイミングで買いサインというものです(下記画像向かって左。点線が短期移動平均線)。
一方で、デッドクロスは、短期の移動平均線が中期の移動平均線を上から下へとクロスしたタイミングで売りサインというものです(下記画像向かって右。短期移動平均線)。
こう見ると、さきほどの『グランビルの法則』の交差で売買の法則に似ているように感じます。しかし、『グランビルの法則』の方は「株価と移動平均線の交差」、ゴールデンクロスやデッドクロスは「移動平均線と移動平均線の交差」のことなので、勘違いをしないようにしましょう。
さて、このサインは確かに有名なのですが、実際の使用には注意すべき点があります。短期売買に関しては、株価の動きが激しいと移動平均線と株価のクロスが頻繁に発生してしまいます。
そのため、ダマシ(売買サイン発生に見えるニセのシグナル)がおきることがあります。そんな時にはクロスしたと見せかけて結局クロスせずに終わることも多いため、例えばゴールデンクロスしたと考えて株を買ってしまった場合に、その後株式は上昇せずに下落もしくは横ばいになることもあります。
ゴールデンクロスやデッドクロスを利用する場合に、ダマシにひっかかったと判断したなら素直にいったん仕切り直し(いったん損失を確定させる)をしましょう。
逆に、ゴールデンクロスやデッドクロスによって株の上昇や下落の流れに乗れた場合には、利益をできるだけ伸ばすようにするとよいでしょう。おすすめの応用的な利用法としては、ゴールデンクロスをする前に株を仕込んで、思惑通りクロスをしたら株を売るのではなく、新たに株を買い増しして利益をのせていくという方法があります。
上記が図説です。
黒い矢印地点で株を仕込んでおいて、クロス後オレンジの矢印で株をさらに買い増しするということになります。クロスが失敗しても、先に仕込んでおいた株式に利益が乗っているため、それほど落胆せずに失敗を受け入れることができるはずです。
なおゴールデンクロスやデッドクロスをした銘柄を目視で探すのは大変な労力を必要としますが、下記サイトでは5日移動平均線と25日移動平均線のゴールデンクロスした銘柄をデータで知ることができます。
デイトレで大きな力を発揮する日足の移動平均線
デイトレ(デイトレード)は1日の株の値動きを利用して売買を繰り返すトレードのことを指します。基本的には1日の値動きを見て取引をするように思えますが、やり手の投資家は 取引前に日足の移動平均線を見て次の日のデイトレの売買スタンスを決める ことがあります。大別すると以下の2点となります。
- 5日移動平均線と株価の位置から決定するデイトレの売買スタンス
- 25日移動平均線のかい離から決定するデイトレの売買スタンス
日足の移動平均線はスイングトレードでおもに利用するものですが、実はデイトレにも活かすことができるのです。具体例を見ていきましょう。
#01 5日移動平均線と株価の位置から決定するデイトレの売買スタンス
通常を株価のチャートをみると5日移動平均線と株価を示すローソク足が下記チャートのように絡み合って動いていることがわかります。短期的には、5日移動平均線より株価が上にあるときにはその株式に買いが入っている、逆に下にあるときにはその株式に売りが入っていると考えることができます。
5日移動平均線を前日に確認して今の株価が上にあるか下にあるかを知っておくだけで、翌日の売買スタンスをどちらにするのか決めることができます。
#02 25日移動平均線からのかい離から決定するデイトレの売買スタンス
そんな時には、一時的にデイトレでリバウンド(株価の反発)を狙うことができます。株価は上がったり下がったりしますが一方方向へと動き続けることはあまりなく自律反発という現象が起きます。
その際には、一時的に大きくリバウンドすることがありますので、そのタイミングをデイトレで狙うのです。移動平均線より株価が大きく離れて下がったら買い目線、逆に大きく離れて上がったら売り目線とスタンスを決めてトレードにのぞむことができます。
このように、 日足のチャート上にある移動平均線をデイトレのような超短期の売買にも利用 することができるのです。参考までに覚えておいてください。
移動平均線を利用するときの注意点
移動平均線はテクニカル分析の代表的な指標ですが、絶対的な指標ではないことを頭に入れておきましょう。その上で、次の点に注意するようにしてください。
- 基本的には売買スタンスを決める要素として利用すること
- ほかの指標と組み合わせてより売買ポイントとしての精度をあげること
- 移動平均線に対する株価の位置の理由をさぐること
#01 基本的には売買スタンスを決める要素として利用すること
売買のスタンスとは、取引の際に買いの目線でいこうか売りの目線でいくかを決めることをいいます。まず移動平均線はこのスタンス決めにもっとも向いています。売買のタイミングを知るためにも使用可能ですが、はじめに移動平均線を利用するときには売買スタンスを決めることから入るようにしましょう。
#02 ほかの指標と組み合わせてより売買ポイントとしての精度をあげること
さらに移動平均線には売買のポイント(タイミング)を知る機能があります。ただし、売買のタイミングをはかるのは移動平均線のみの利用では心もとなく、ほかの指標を組み合わせて使うことで精度を強化する必用があります。指標は自分が使いやすいものを組み合わせるべきですが代表的なものに以下の指標があります。
チャートの下の方を見ると、緑のまるで囲まれた部分があります。株価が大きく下落して25日移動平均線からかい離した地点(矢印地点)の出来高になります。ほかの出来高よりも明らかに線量が多いことが分かりますが、これはセリングクライマックス(売りの最高潮状態)といえる現象です。
応用的な知識となりますが、移動平均線から大きく離れた状態に株価があるときには、出来高増加などの指標を組み合わせてみてみることをお勧めします。
また日経平均株価と移動平均かい離率の関係(前述)でもマイナス10%程度が絶好の買い場になるとお話をしました。そこに信用評価損益率という数値を取り入れるとさらに信頼度は高くなります。
- 日経平均株価の25日移動平均かい離率(マイナス10%)
- 信用評価損益率 買い方(マイナス15%程度)
#03 移動平均線に対する株価の位置の理由をさぐること
移動平均線に対して株価が大きく動き売買チャンスだと思えても、いったん思いとどまってその動いた理由を自分で調べてみることも大事です(特に個別銘柄の場合)また移動平均線による買いのシグナルが出現したとしても、一時的なニュースによるものである場合もあります。
移動平均線をより精度高く使用するためには、 移動平均線と株価がどうしてそのような位置にあるのか理由を確認する作業を怠らないことが大事 なのです。その癖をつけることで、手を出すべき局面なのか、そうでない局面なのかを判断できる投資家になるはずです。
移動平均線を使いこなすまとめ
短期投資においては株価の短期的な上下を先回りして予測して売買することが「基本のき」になります。 株価の流れや株価の強弱(買われているか、売られているか)を判断するためのテクニカル指標 なのです。
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棚卸資産とは?原価法・低価法・最終仕入原価法など全7種類の評価方法や計算の仕方をわかりやすく解説!
消耗品を購入したときは、「消耗品費」として経費に計上します。一般的に消耗品というとボールペンや封筒、印刷用紙といった事務用品や、蛍光灯、電池、来客用のコーヒーなど、使い切りのものや使用に応じて量が減っていくものを指します。会計・税務においても一般的なイメージのとおりで、国税庁が公表している「帳簿の記帳のしかた」では以下のものが消耗品費に該当するとしています。雑費との違いは?消耗品費と間違えやすい経費として「雑費」がありますが、雑費は、事業上の費用でほかの経費に当てはまらない一時的な費用または高額でない費用が分類されます。便利に使える科目ですが、雑費が多額になると経費の内容が不明瞭になります。消耗品費やその他の勘定科目で当てはまるものがないか確認し、使用するのはできるだけ避けましょう。消耗品の会計処理本来であれば、消耗品は実際に使用したタイミングに経費として認められるので、期末に未使用で残っているものは資産計上することが必要になります。しかし実務においては、たとえばボールペンやコピー用紙といったものはまとめ買いするのが普通であり、これらを期末のたびに数えなおして資産として反映させるのは現実的な話ではありません。そこで会計の考え方として、「重要性の原則」というものがあります。簡単に言えば、基本的には原則的な処理が求められるものの、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理ではなく他の簡便な方法を使用することも認められるという考え方です。つまり、まとめ買いをした消耗品は購入時に一括で経費として処理することができる場合があるということです。税務上も扱いは同様で、国税庁の通達という形で実務上の指針が示されています。その通達の表現としては以下のとおりです。消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。 (法人税基本通達2-2-15)要約すると、毎年おおむね一定数量を取得しており、経常的に消費しているもので、毎年購入時に費用として処理している場合は、期末に消耗品の未使用分を数えなおして資産計上するといった処理は不要で、そのまま購入年度の費用として処理してもよいということです。一括で経費処理ができないもの一方で、一般的には消耗品と呼ばれていても一括で経費にできないものがあります。まず挙げられるのは、収入印紙、郵便切手、新幹線などの回数券、プリペイドカードといったものです。これらは、金銭と同等のものとして取り扱う必要があるため、原則どおり未使用分は資産計上する必要があります。また、製品の製造等に必要な消耗品は、経費としての処理ではなく、製造原価に算入する必要があります。つまり、製造に直接かかわる形で使用する消耗品は、消耗品費として販管費の中で処理するのではなく、原価計算を通じて製造原価に反映していくことが求められます。「少額減価償却資産の特例」について青色申告書を提出している中小企業者等の場合、取得金額が10万円以上30万円未満のとき、「少額減価償却資産の特例」により、その年に全額を即時償却(一括経費化)することが可能です(年間総額300万円以内)。あるいは、取得価額が10万円以上20万円未満の備品であれば「一括償却資産」として処理することができ、その場合には、取得金額の3分の1ずつを3年間にわたって費用計上する方法も選べます。消耗品の仕訳例消耗品を購入した際の仕訳方法を、「購入時に一括で経費処理ができる消耗品のケース」と、「郵便切手や収入印紙など資産計上が必要なケース」で解説します。購入時に一括で経費処理ができる消耗品のケース1箱1,000円のコピー用紙10箱を現金で購入した場合購入時の仕訳借方貸方消耗品費10,000円現金10,000円※ まとめ買いが認められるには、毎回一定数量を購入し経常的に消費していることが必要です。その会社等の実情を踏まえ、明らかに過剰な場合(例:通常10箱なのに50箱であるなど)、その期間における経費とならない可能性もあるので注意しましょう。郵便切手や収入印紙など資産計上が必要なケース1万円の収入印紙を現金で購入した場合購入時の仕訳借方貸方租税公課10,000円現金10,000円期末に未使用の収入印紙が8,000円あった場合の仕訳借方貸方貯蔵品8,000円租税公課8,000円翌期首の仕訳借方貸方租税公課8,000円貯蔵品8,000円まず購入時に「租税公課」勘定で処理します。期末に未使用を「貯蔵品」勘定で資産計上します。そして期首に「貯蔵品」を「租税公課」に再度振り替えます。消耗品のまとめ買いによる節税シミュレーション消耗品のまとめ買いにより、購入金額を一括経費とすることで得られる節税効果を見てみましょう。期末に100万円の利益が見込まれ、実効税率を21.4%と仮定した場合で簡易的にシミュレーションしてみます。期末に当面必要となる消耗品を20万円分購入した場合、利益が20万円圧縮され80万円となり、結果として約4.2万円法人税等の額が減少します。これがいわゆる節税対策としての消耗品のまとめ買いです。ただし、この方法は一見今期の法人税額が減少しているようですが、実際には翌期以降に費用化されるものを前倒しして今期に反映させているだけとなります。あくまでも課税時期を繰り延べているだけであることに注意しましょう。まとめ買いがメリットになるケース仮に、翌期が始まってそう遠くない時期に購入する必要があるものならば、決算前にまとめて購入すると、支出のタイミングはそこまで変わらない一方で、税金の支払いを早めに減少させることができるため、キャッシュフロー上のメリットを得ることができます。また、法人税の実効税率が翌期以降低下することが見込まれている場合や、事業承継に伴う株価の算定があるため、今期の利益を圧縮しておきたい場合には、課税時期の繰延というのはメリットのある方法です。決算前に消耗品をまとめ買いするときの注意点通達の示す範囲を超えているような過度なまとめ買いは税務調査で指摘される可能性があります。決算前に利益が見込めるために、当面必要となる数量を若干多め・早めに用意しておく程度であれば、事業運営上必要と考えられる範囲だと認識されるでしょう。しかし節税対策だけを目的として、当面必要とされる範囲を超えて大量に購入し、税務調査で経費として認めてもらえない場合は、税金の納付が遅れたことに対するペナルティとして「延滞税」などが課されてしまいます。節税対策としての消耗品のまとめ買いについては、事業運営という本来の目的を見失わない範囲で行うことが大前提となります。おわりに消耗品のまとめ買いは手軽にできる節税対策と考えられがちですが、実際の効果は課税の繰り延べであることに注意が必要です。来期の事業計画やキャッシュフローまでを考慮して、検討する必要があります。決算前の節税対策を検討する際には、どのように対応するのが最適か税理士によく相談することをおすすめします。
相続税基礎知識に関するコラム
自社株とは、同族会社のオーナー社長やその一族が所有する株式のことをいいます。取引相場のある上場株式は、取引所の株価という客観的な数字で株価を評価することができますが、中小企業のような 上場していない会社の株価を評価する場合、客観的な数値がありません 。この自社株をどのように評価するかというと、国税庁が作成している「財産評価基本通達」の「取引相場のない株式等の評価」に基づいて評価することになります。 非上場株式とは、上場株式以外の株式の総称であり、非上場株式の中でも上場株式に近い規模の大会社から、個人企業並みの小規模会社までその内訳は千差万別であります。よって、非上場株式の評価方法を定める財産評価基本通達では、取引相場のない非上場株式を規模に応じて大会社・中会社・小会社に区分し、区分に応じてそれぞれに即した評価方式を定めています。
非上場株式を贈与や相続で取得した株主が同族株主かそれ以外の株主かによって評価方法が変わってきます。同族株主か否かで会社経営への影響度(支配力)が変わるため、支配力によってその株式を保有している目的も変わってくると考えられるからです。
支配権を有する同族株主が取得する株式の評価は、会社の業績や資産内容等を反映した原則的評価方式(類似業種比準方式、純資産価額方式及びこれらの併用方式)により評価し、同族株主以外の少数株主が取得する株主は特例的評価方式(配当還元方式)により評価することになります。一般的に 特例的評価方式(配当還元方式)による評価の方が株価は低くなる傾向にあります 。
また、評価対象会社が保有している資産の大半が株式・土地等の資産内容が特異な会社、開業間もない会社・休眠会社等の営業状態が特異な会社(特定会社)は、通常の事業活動を前提としている原則的な評価方法は馴染まないため、個別にその評価方法が定められています。
なお、非上場株式を売買する際の売買価格の考え方については、「非上場株式の売買価格ページ」を参照してください。
2.取引相場のない株式等の評価方式の区分
(1)同族株主のいる会社の評価方式
株主の態様 | 評価方式 | |||
同族株主 | 取得後の議決権割合が5%以上の株主 | 原則的評価方式 (類似業種比準方式又は純資産価額方式、若しくはそれらの併用方式) | ||
取得後の議決権割合が5%未満の株主 | 中心的な同族株主がいない場合 | |||
中心的な同族株主がいる場合 | 中心的な同族株主 | |||
役員文は役員予定者 | ||||
その他の株主 | 特例的評価方式 (移動平均法による評価方法をわかりやすく解説 配当還元方式) | |||
同族株主以外の株主 |
①同族株主とは
②同族関係者とは
③中心的な同族株主とは
(2)同族株主がいない会社の評価方法
株主の態様 | 評価方式 | |||
議決権割合の合計が15%以上の株主グループに属する株主 | 取得後の議決権割合が5%以上の株主 | 原則的評価方式 (類似業種比準方式又は純資産価額方式、若しくはそれらの併用方式) | ||
取得後の議決権割合が5%未満の株主 | 中心的な株主がいない場合 | |||
中心的な株主がいる場合 | 役員又は役員予定者 | |||
その他の株主 | 特例的評価方式 (配当還元方式) | |||
議決権割合の合計が15%未満の株主グループに属する株主 |
①中心的な株主とは
(3)会社規模の区分に応じた評価方式の概要
会社区分や評価方式の詳細な説明は後述しますが、会社規模の区分に応じて評価方式は下記の通りとなります。会社の規模 | 評価方式 | 備考 |
大会社 | 類似業種比準価額 | 純資産価額でもよい |
中会社の大 | 類似業種比準価額×90%+純資産価額×10% | |
中会社の中 | 類似業種比準価額×75%+純資産価額×25% | |
中会社の小 | 類似業種比準価額×60%+純資産価額×40% | |
小会社 | 純資産価額 | 〈類似業種比準価額×50%+純資産価額×50%〉でもよい |
★類似業種比準方式と純資産価額方式の比較
類似業種比準方式 | 純資産価額方式 |
利益の大きい会社の評価額が高くなる傾向 | 移動平均法による評価方法をわかりやすく解説社歴が長く剰余金の大きい会社の評価が高くなる |
上場会社の株価が高いと評価も上がる (外部要因の影響を受ける) | 含み益のある不動産は株式等の資産を所有していると評価が高くなる |
評価額の変動が大きいので対策がしやすい | 評価額の変動が小さいので対策が難しい |
3.非上場株式の評価方法
(1)原則的評価方式
①類似業種比準方式
②純資産価額方式
- 例)
- ・土地建物等を課税時期開始前3年以内に取得等した場合の価額は、相続税評価額ではなく、課税時期における通常の取引価額相当額により評価する。
- ・繰延資産等、換金価値のない資産は評価対象としない。
- ・営業権を評価する必要がある。
- ・直前期末日後から課税時期までに確定した剰余金の配当等の金額は負債に計上する。
- ・評価会社が受取る生命保険金等は資産に計上する必要がある。同時に保険金に対する法人税等相当額について負債に計上する。
- ・固定資産税等のうち、課税時期において未払がある場合には負債に計上する。
- ・被相続人の死亡により支給が確定した退職手当金・功労金等は負債に計上する。
★評価減ができる場合とできない場合のまとめ
会社の規模 | 原則 | 納税者の選択 |
大会社 | 類似業種 | 純資産価額【評価減不可】 |
中会社 | 類似業種×L+純資産価額【評価減可】×(1-L) | 純資産価額【評価減不可】×L+純資産価額【評価減可】×(1-L) |
小会社 | 純資産価額【評価減可】 | 類似業種×0.5+純資産価額【評価減可】×0.5 |
(2)例外的評価方式(配当還元方式)
①配当還元方式が適用できる株式
- ア)同族株主のいる会社の同族株主以外の株主が取得した株式
- イ)同族株主のいる会社の同族株主グループに含まれるが、会社支配力の少ない一定の少数株主(一定の役員を除く)として取得した株式
- ウ)同族株主のいない会社の株主の内、議決権割合が15%以上の株主グループがいる場合 で、その株主らが15%以上の株主グループに含まれない株主として取得した株式
- エ)同族株主のいない会社において、議決権割合が15%以上の株主グループがいて、さらにその15%グループの中に中心的な株主がおり、判定する本人が中心的な株主でなく、一定の役員でない場合の株主として取得した株式
③評価方法の選択
4.会社規模の区分
「3.非上場株式の評価方法」に記載の通り、 評価方法は3種類 ありますが、どの評価方法が採用されるかは、会社規模の区分によって判定します。
会社規模の区分の判定を行うのは、上場会社に近い規模の会社については、上場会社の株価を基にした類似業種比准方式により評価し、規模の小さい会社については事業用資産の評価に基づく純資産価額方式による評価が実態に即していると考えられるためです。
「会社規模」は、下の表のように従業員数、総資産価額、取引金額、業種に応じて、大会社、中会社、小会社に区分します。
このうち中会社はさらに、大、中、小に分かれるため、会社規模は5つに区分されます。
この5つの区分によって、評価方式が決まります(以下の図参照)。
なお、従業員数が70人以上であれば、無条件で「大会社」です。
会社の規模 | 総資産価額(帳簿価額) | 移動平均法による評価方法をわかりやすく解説従業 員数 | 年間の取引金額 | ||||
卸売業 | 小売・サービス業 | その他の 事業 | 卸売業 | 小売・サービス業 | その他の 事業 | ||
大会社 | - | - | - | 70人 以上 | - | - | - |
大会社 | 20億円 以上 | 15億円 以上 | 15億円 以上 | 35人超 | 30億円 以上 | 20億円 以上 | 15億円 以上 |
中会社(大) | 4億円 以上 | 5億円 以上 | 5億円 以上 | 35人超 | 7億円 以上 | 5億円 以上 | 4億円 以上 |
中会社(中) | 2億円 以上 | 2億5,000万円 以上 | 2億5,000万円 以上 | 20人超 | 3億5,000万円 以上 | 2億5,000万円 以上 | 2億円 以上 |
中会社(小) | 7,000万円 以上 | 4,000万円 以上 | 5,000万円 以上 | 5人超 | 2億円 以上 | 6,000万円 以上 | 8,000万円 以上 |
小会社 | 7,000万円 未満 | 4,000万円 未満 | 5,000万円 未満 | 5人 以下 | 2億円 未満 | 6,000万円 未満 | 8,000万円 未満 |
5.会社規模ごとの評価方法
(1)大会社の評価方法
(2)中会社の評価方法
①総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)及び従業員数に応ずる割合
卸売業 | 小売・サービス業 | 卸売業、小売・サービス業以外 | 割合 |
4億円以上(従業員数が35人以下の会社を除きます。) | 5億円以上(従業員数が35人以下の会社を除きます。) | 5億円以上(従業員数が35人以下の会社を除きます。) | 0.90 |
2億円以上(従業員数が20人以下の会社を除きます。) | 2億5,000万円以上(従業員数が20人以下の会社を除きます。) | 2億5,000万円以上(従業員数が20人以下の会社を除きます。) | 0.75 | 移動平均法による評価方法をわかりやすく解説
7,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除きます。) | 4,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除きます。) | 5,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除きます。) | 0.60 |
②直前期末以前1年間における取引金額に応ずる割合
卸売業 | 小売・サービス業 | 卸売業、小売・サービス業以外 | 割合 |
7億円以上30億円未満 | 5億円以上20億円未満 | 4億円以上15億円未満 | 0.90 |
3億5,000万円以上7億円未満 | 2億5,移動平均法による評価方法をわかりやすく解説 000万円以上5億円未満 | 2億円以上4億円未満 | 0.75 |
2億円以上3億5,000万円未満 | 6,000万円以上2億5,000万円 | 8,000万円以上2億円未満 | 0.60 |
(3)小会社の株式の評価方法
(4)特定評価会社株式の評価
①土地保有特定会社
土地保有割合(相続税評価額による) | ||||
大会社 | 70%以上 | |||
中会社 | 90%以上 | 移動平均法による評価方法をわかりやすく解説|||
小会社 | 総資産価額(帳簿価額) | 土地保有割合 (相続税評価額による) | ||
卸売業 | 小売・サービス業 | 却売・小売・サービス業以外 | ||
20億円以上 | 15億円以上 | 70%以上 | ||
20億円未満 7,000万円以上 | 15億円未満 4,000万円以上 | 15億円未満 5,000万円以上 | 90%以上 | |
7,000万円未満 | 4,000万円未満 | 5,000万円未満 | 適用除外 |
【土地保有特定会社の評価方法】
区分 | 評価方法 |
同族株主が取得した株式 | 純資産価額方式 ただし、株式の取得者とその同族関係者の有する持株割合が50%以下であるときは、純資産価額の80%が評価額となります。 | 移動平均法による評価方法をわかりやすく解説
同族株主以外が取得した株式 | 配当還元方式 ただし、配当還元価額が、上記原則又は特則により評価した価額より高い場合は、上記原則又は特則により評価した価額になります。 |
【資産の組み替えについて】
土地保有特定会社の判定を回避するためには、土地を売却して他の資産に組み替える方法や、会社の組織再編を行い土地の保有割合を引き下げ、土地保有特例会社の判定から外すための対策が行われることがあります。
しかし、課税時期前に合理的な理由がなく、土地の保有割合の引き下げをのみを目的として資産変動が行われた場合には、その資産変動はなかったものとして、土地保有割合の判定が行われることになります。具体的には直前に多額の借入を行う資産の組み替え等が考えられます。
②株式保有特定会社
課税時期における評価会社の総資産に占める株式・出資の価額の合計の割合が50%以上である会社を「株式保有特定会社」といいます。
株式保有特定会社の判定となる株式等は、上場・非上場、所有期間、所有目的を問いません。また出資金、新株予約権付社債も含まれます。
該当するもの | 証券会社が保有する商品としての株式 外国株式 株式制のゴルフ会員権 新株予約権付社債 |
該当しないもの | 匿名組合の出資 証券投資信託の受益証券 |
【株式保有特定会社の評価方法】
原則として純資産価額方式により評価することとされています。
ただし、純資産価額方式に代えて、「S1+S2」方式とよばれる類似業種比準方式を修正した評価方式により評価をすることもできます。
「S1+S2」のうち「S2」は、会社が保有する株式等に相当する部分の価額をいい、純資産価額方式により評価されます。「S1」は、会社が保有する株式等やその株式等に係る配当金を除外した上で会社規模に応じた原則的評価方式である類似業種比準方式、純資産価額方式またはその併用方式により評価した金額となります。このS1の金額とS2の金額の合計額が、「S1+S2」方式による評価額となります。
株式保有特定会社に該当すると、株式評価において純資産価額の占めるウエイトが高くなるため、含み益のある株式を多数保有している場合は株価が高額になるおそれがあります。
区分 | 評価方法 | |
同族株主が取得した株式 | 原則 | 純資産価額方式 ただし、株式の取得者とその同族関係者の有する持株割合が50%以下であるときは、純資産価額の80%が評価額となります。 |
特例 | S1+S2方式 | |
同族株主以外が取得した株式 | 配当還元方式 ただし、配当還元価額が、上記原則又は特則により評価した価額より高い場合は、上記原則又は特則により評価した価額になります。 |
【資産の組み替えについて】
株式保有特定会社の判定を回避するためには、株式等を売却して他の資産に組み替える方法や、会社の組織再編を行い株式の保有割合を引き下げ、株式保有特例会社に該当しないようにすることを考えられます。
しかし、課税時期前に合理的な理由がなく、土地の保有割合の引き下げをのみを目的として資産変動が行われた場合には、その資産変動はなかったものとして、株式等保有割合の判定が行われることになります。具体的には直前に多額の借入を行う資産の組み替え等が考えられます。
③比準要素数1の会社
★直近基準の判定
配当⇒ゼロ
利益⇒ゼロ(直近、2期前ともにマイナスのため) 移動平均法による評価方法をわかりやすく解説
純資産⇒100
∴ 配当と利益がゼロのため2つ以上の金額がゼロに該当
★2期前基準の判定
配当⇒ゼロ
利益⇒50(△500と600の平均)
純資産⇒300
∴ 配当はゼロだが、利益と純資産がプラス
結論⇒直前前期はいずれか2つ以上の金額が0ではないため比準要素1の会社に該当しない
比準要素数1の会社は、類似業種比準価額で評価する際に、適正な評価をすることが出来ないため、特別な評価方式により評価します。
しかし、株式保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社や開業前または休業・清算中の会社に該当する場合は比準要素数1の会社には含まれません。
比準要素数0の会社は、別途規定が設けられています。
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